アウト&アウト(2018年)

映画

ジャンル:マル暴系ドラマ、レオンになりきれなかった邦画
監督:きうちかずひろ
主演:遠藤憲一、白鳥玉季

見どころ

映画の出来としては、残念です。
テーマや題材からすれば、もっとよく出来たはず。
でも、いろいろな制約と大人の事情と自重が重なって、こんな映画になったのでしょう。

とにかく子役・白鳥玉季への演出が凄い。
子役だからたどたどしいセリフではあるのですが、
逆にその方がスクリーンを通すと自然に映ります。
むしろ、その他の大人の俳優のダイコンが気になるくらい。

主人公・矢能(遠藤憲一)は、
一緒に暮らす栞(白鳥玉季)のことを大事に思っています。
それは、自分よりまっとうな人間が現れたら、その人に栞を預けたい、というもの。
矢能はわけあって栞を預かっている身なのですが、
しかし、矢能自身は元ヤクザの探偵。
まっとうな身分とは言えないからです。

劇中の「事件」は、はっきり言ってどうでもいいタイプのもの。
事件にまつわる人間模様も、ありきたりで、薄くて、雑です。
映画として魅力的な題材ではありません。
しかし、本作はそれを楽しむ映画ではないのです。

事件を機会として、矢能の周囲の人間関係が映し出されます。
かつて畏怖される存在だった大物ヤクザが、
どうして探偵業なんかをしているのか?
そんな矢能を慕って集まるアウトローたち。

それよりなにより、矢能と栞の関係です。
栞は小学校2年生の少女。
そんな少女は、姿格好に似合わない行動をとります。
まるで、20代半ばの女性、見ようによっては壮年期を迎えた女のようです。

スクリーンを通してみれば、
矢能と栞は「親子」ではなく「夫婦」。
製作者も演出も、きっとそれを意識して作っています。

似たような作品に、リュック・ベッソン監督作品の「レオン」がありました。
演じたのはジャン・レノとナタリー・ポートマン。
中年男の暗殺者と、13歳の少女による危ない恋愛劇でした。

しかし本作の少女は12歳ではなく8歳。
8歳の少女と、50歳くらいの男の話なんですよ。

栞が発するセリフに、ゾッとさせられることが何度もあります。
普段はただの8歳の少女なのに、矢能に対しては妻のような声掛けをするのです。
その言葉の数々は、およそ「娘」のそれではありません。

矢能はそれに気づいていません。
否、無意識に自分で「気づかないように」しています。

このままあと10年くらいすれば、自分は栞を「女」として見てしまう。
元ヤクザの矢能にしてみれば、そういう話の結末の悲しさは重々承知。
だから「自分の娘になれ」と言ったのです。
その方が、栞にとっても、そして自分にとっても幸せなはずだと考えたからです。

2人の男女関係にもう少し焦点を当てることができたら、
さらに奥深い映画になったことでしょう。
ですが、そんなことするとロリコン映画のレッテルを貼られるし、
今どき、子役を使ってそんな映画は撮れません。

本作を見る上では、矢能と栞の男女関係を踏まえて鑑賞してみてください。
一般的な解釈とは、少し違った作品に見えるはずです。

名言

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