【大学ランキング 東大が首位陥落】っていう、どうでもいいニュースを深掘りしてみた|偏差値(高校生目線での人気度)との相関関係

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偏差値とは異なる大学ランキング 

THE世界大学ランキング(以降、THE)というものがあります。
最近の大学当局も、これを結構気にし始めました。
世の中の流れによっては、現時点で日本の大学レベルを示す「偏差値」のような扱いになるかもしれないからです。

偏差値は、入試倍率や入学しようとする学生の学力から、
「人気のある大学」や「実力のある大学」を測ろうとしているのに対し、
THEでは、「卒業生の活躍度」や「在学生にかけているお金」といった指標から
大学の教育レベルを算出しようというものです。

私としては、THEのランキングは偏差値の指標よりも受験生や在学生にとっては有益なものだと思います。
偏差値はあくまでも「高校生の期待値」「ブランド」を数値化したものであるのに対し、
THEは実際の教育状況を数値化したものだからです。

2019年度版:THE日本の大学ランキング

THE世界大学ランキングというくらいですから、これは世界中の大学で試みられています。
しかし、日本人の多くが日本の大学を受験するのですから、日本の大学のみで作成されたのがこちらです。
ここでは「総合得点」の順に、トップ20のみを掲載しました。
全てのランキングはTHE世界大学ランキング日本版をご覧ください。

表の右端にはベネッセが作成した偏差値を併記しております。
※なお、この偏差値は大学の代表値として、各大学における「医・歯・薬・獣医学」を除いた学部学科の最高値を採用しました。

総合得点は、「教育リソース」「教育充実度」「教育成果」「国際性」のそれぞれの得点を、下記で示す規定の%毎に総合したものです。
各指標は以下の通りです(THEのホームページより抜粋)。

教育リソース|どれだけ充実した教育が行われている可能性があるか

「教育リソース」は5項目で構成され、全体の34%を占める。

学生一人あたりの資金(8%)
学生一人あたりの教員比率(8%)
教員一人あたりの論文数(7%)
大学合格者の学力(6%)
教員一人あたりの競争的資金* 獲得数(5%)
*内閣府ホームページ「競争的資金制度」に掲載のある「平成29年度競争的資金制度一覧」に挙げられている競争的資金制度を対象とした。

教育充実度|どれだけ教育への期待が実現されているか

「教育充実度」は5項目で構成され、全体の30%を占める。

学生調査:教員・学生の交流、協働学習の機会*1(6%)
学生調査:授業・指導の充実度*1(6%)
学生調査:大学の推奨度*1(6%)
高校教員の評判調査*2:グローバル人材育成の重視(6%)
高校教員の評判調査*2:入学後の能力伸長(6%)
*1(株)ベネッセコーポレーションが日本の大学に在籍する学生を対象に実施。各大学の教育改革を学生が認識出来ているがどうか。その度合いを0~10点で回答。質問内容によって、「教員・学生の交流、協働学習の機会の程度」「授業・指導の充実度」「大学の推奨度」に分類してスコアを算出。
*2(株)ベネッセコーポレーションが高等学校の進路担当教員を対象に「大学に関する印象調査」を実施。卒業生からさまざまな情報を集めて多くの高校生に進学のアドバイスをしている進路担当教員の意見により、見えにくかった大学生の満足度を推し測ることができる。

教育成果|どれだけ卒業生が活躍しているか

「教育成果」は2項目で構成され、全体の16%を占める。

企業人事の評判調査*1(8%)
研究者の評判調査*2(8%)
*1(株)日経HRによる「企業の人事担当者から見た大学のイメージ調査」。卒業生の活躍を多面的に評価。
*2「THE世界大学ランキング」において高等教育機関研究者を対象に「教育力の高い大学」を調査。

国際性|どれだけ国際的な教育環境になっているか

「国際性」は4項目で構成され、全体の20%を占める。

外国人学生比率(5%)
外国人教員比率(5%)
日本人学生の留学比率(5%)
外国語で行われている講座の比率(5%)
各大学の改革が急速に進んでおり、グローバル化への対応度合いが端的に表れている。

偏差値とTHEの相関をとってみました

このTHEを、受験生の期待値や人気度と相関をとってみました。
これにより、受験生がその大学を見る目と、その大学の教育状況との関連性が分かります。

予めご了承いただきたいのは、作成するのが非常に面倒なため、
THEの総合得点の上位100大学のみを使って制作しています。

総合得点との相関

偏差値70以上の大学でも総合得点が低い大学があり、両者の関連性は低いと思った方が良いようです。
偏差値が70でも、50と同じ程度の総合得点が低い大学もあります。
ただし、逆に偏差値60以下の大学には総合得点が高いところはありません。
ですから、偏差値と総合得点にはある程度の関連性は認められます。

なお、総合得点は100位以下の大学で42点が最低値となります。
つまり、得点の範囲は約40〜80です。

教育リソースとの相関

教育リソース得点は100位以下の大学では32.4が最低値となります。
つまり、得点の範囲は約30〜90です。

関係性はかなり低いと思っていいでしょう。
偏差値75以上の大学であっても、教育リソース(学生にかけているお金や教員の研究レベル)は高くないことが分かります。
特に、偏差値70以下で顕著になっており、東京大学と京都大学以外の大学を志望する人の中で、「ブランド」「知名度」に頼らず、自分から積極的に勉強や研究をしたい人は検討の余地がありそうです。
てっきり有名大学だからと思って入学したら、飼い殺しの憂いをみる可能性があります。

教育充実度との相関

教育充実度得点は100位以下の大学では53.2が最低値となります。
つまり、得点の範囲は約50〜90です。

この両者には、相関関係があるように見えます。
たとえば、偏差値が70を越えてくれば、ほぼ教育充実度が高い大学と思って良いでしょう。
ただ、問題となるのは教育充実度の調査が「学生と高校教員からの聞き取り」であること。
偏差値の高い大学に入った学生は、それだけ満足度が高く、
一方、偏差値の低い大学に入った学生は、そこが滑り止めであれば不満を持ちやすい可能性があります。
ともあれ、教育が充実していると感じるのは高偏差値の大学に多い傾向は確かなようです。

教育成果との相関

教育充実度得点は100位以下の大学では27.4が最低値となります。
つまり、得点の範囲は約30〜100です。

これも偏差値との関連性が強いように思いますが、データを詳細に見るとそうとも言えません。
まず、偏差値70以上の大学であっても、偏差値50程度の大学とほとんど変わりません。
たしかに、偏差値が飛び抜けて高い大学は活躍している卒業生も多いようですが、
それを言い出したら偏差値65程度の大学の中にも同程度の大学がいくつか存在します。
卒業後の活躍というのは、以前も記事にしたように、その人が持って生まれた「遺伝」で決まるのです。
難関・有名大学を卒業しても、その学生の将来は遺伝で決まる|行動遺伝学が突きつける残酷な真実
しかも、この調査方法は企業人事と研究者からの評判を聞いたものです。
独立・起業したり、先進的でユニークな活躍をしている人は含まれていません。

国際性との相関

まったく関係ありません。
我々大学側もそうじゃないかと思っていましたが、やっぱりそうだったんですね。

あれだけ「スーパーグローバル大学」を掲げて邁進してきましたが、高校生の評判とは合致しません。
高校生の評判が良くないんだから、どうしても質の悪い学生が増えて困っています。
詳しくはこちらの記事を読んでください。
お金と時間をムダにした? スーパーグローバル大学の学生にメリットは無かった

受験生と在学生に向けて

現状の日本において、THEは偏差値との抱き合わせで評価することが望ましいでしょう。
偏差値は入試難度を考慮する上で有益ですし、
THEを見れば偏差値が低くても充実した教育環境がある大学を見つけることができます。

ただ、現時点で総合1位の京都大学や偏差値トップの東京大学は、
やはり国内では最高の教育が受けられることが保証されていると言っていいでしょう。

その一方で、
「大学に行ったら、とにかく積極的に勉強したり活動したい! でも、私は頑張っても偏差値60くらいの大学しか無理」
という人は、入る大学を間違えると残念なキャンパスライフを送る可能性があります。


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