大学体育会の運動部に「部則」があった
21世紀に入って早20年近く。
2019年現在では、おおっぴらに「部則」を用意している大学体育会運動部は見かけません。
あったとしても、「組織構成」とか「部費・会計」「役員」「心構え」などといった、
学生組織を運営する上でかしこまった内容のものだけになりました。
しかし、かつての大学体育会では、「これぞ体育会系の醍醐味」とも言える、
意味不明で摩訶不思議な部則が用意されていました。
それを周りの学生は「お前らのクラブって、大変だよな」といじるのが常だったのです。
特に、1年生・2年生に向けた特別な部則があった
4月中旬のある日。
入部したての1年生は空き教室に連行され、そこで2年生から「新入生用の部則」とやらを聞かされます。
2年生の一人が教壇の前に立って言います。
「これから私らが教育係みたいになって、君ら1年の面倒を見ていくから」
機械的な命令の中にも、たどたしさの残る2年生の言葉。
学年リーダーと呼ばれているその部員は話を続けます。
「ノート持ってきてって言ったよね。持ってきてる? そう、じゃあ、それに今から言うことを書いていってくれる。それが1年の部則だから」
よく見ると、隅っこの方で2年生の部員に混じって、一人、3年生が腕組みをして座っています。
その姿はさながらラオウのようです。
この大学運動部の気合いの入りように、面食らう1年生が多かったですね。
かなり厳しめの高校の部活をやってきた1年生は耐性がありますが、
そうでなけば、この部則に適応できずに退部します。
理不尽だけど、理由がある「部則」
新入部員のための「部則」は理不尽なものが多く、
大学生活を謳歌しようと楽しみにしていた学生の心を砕きます。
でも、そんな理不尽に思える、というか理不尽極まりない部則ですが、
その成立過程を聞くと、もっともらしい理由があったようです。
以下に、私が知り合いから聞いたことのある「部則」とその「理由」を紹介します。
学内では、お茶かポカリスエットしか飲んではいけない
お茶かポカリスエット以外を飲んでいるところを見つかると、怒られるそうです。
コーラとかファンタが「体に悪い」と言われていた頃の話です。
学内にいるときだけでも、摂生を徹底しようということでしょう。
今となっては、フルーツジュースはスポーツ選手にとって良いとされていますので、
意味をなさない部則になってしまいました。
朝起きたら、特定の2年生に電話しなければいけない
時間が指定されています。朝8時までに電話する、とか。
当番となっている2年生(上級生)に電話を入れることで、規則正しい生活をさせたかったのでしょう。
でも、電話をした直後に寝る1年生もたくさんいます。
たまに、電話先の2年生が寝てて繋がらない時もあります。
1年生のシューズはミズノ
その競技では、ナイキとかアディダスの製品も流通していて、
海外メーカーのシューズの方がお洒落で好まれていた時期があります。
そのお洒落さが指導者にとっては気に入らなかったのでしょう。
ミズノの製品デザインがダサいのには理由があります。
それは、現場のスポーツ指導者が「ダサいデザイン」を求めているからです。
部活動中は、移動は全てダッシュ
よくある運動部の部則・ルールです。
ただし、厳しい部活では、ダッシュと言っても常に本気のダッシュを求められます。
まるで、かつての佐川急便のようなルールですね。
短い距離を何度も往復するような状況下では、まるで反復横とびテストのようです。
見てると笑いたくなりますが、本人たちは至って本気です。
4年生と一緒に歩いている時は他の人としゃべっていはいけない
部活動中だけではなく、普段からずっとです。
まるでチーマーかヤンキーの世界ですが、かつての大学運動部も似たようなものでした。
目上の人と一緒に歩いている時に、むやみにおしゃべりしない、
という躾を目的としていたようですが、大学生にこれを徹底するのはシュールです。
顔を上げたまま深くお辞儀
コーチや先輩、外部の人に向かっては、一人ひとり45度の深いお辞儀をしなければいけない、という部則。
その際、なんの拘りか知りませんが、顔を上げて相手の顔を見たままお辞儀しましょう、ということだそうです。
それが本来のお辞儀のマナーだとかいう理由だそうですが、明らかに喧嘩を売っているようにしか見えません。
しかも、1年生は会う人会う人みんなにそれをやるから、機械的な高速動作になってしまい、なおさらバカにされている感がして腹が立ちます。
来客者には必ずコーヒーとお菓子を出す
頼んでもいないのに、1年生がコーヒーとお菓子を持ってきます。
でも、インスタントのまずいコーヒーと、賞味期限が怪しいクッキーです。
1年生のうちに「おもてなしの心」を身につけるためとのことですが、明らかに機能していません。
おもてなしの心って、そういうルールで身につけるものではないでしょう。
せめて、「インスタントですが、コーヒーをお出ししましょうか?」と聞くのがマナーです。
今でもたまに見かけます
もう上記のような部則を課しているクラブ活動は根絶されてきましたが、たまに今でも見かけることがあります。
こんなルールを課されたところで、本人の精神力や社会人スキルが高まるわけもなく。
特に指導者や4年生は考え直してほしいですね。
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