ソラリス(2002年)

映画

ジャンル:宇宙科学系SF、生命科学系ドラマ、哲学系SF、意味がわからないことを伝える映画
監督:スティーブン・ソダーバーグ
主演:ジョージ・クルーニー

見どころ

Amazonの解説には、
“「2001年宇宙の旅」「ブレードランナー」に並ぶSF映画の三大金字塔”
と紹介されています。

その謳い文句は伊達ではありません。
SF小説として知る人ぞ知る名作小説、スタニスワフ・レム『ソラリスの陽のもとに』の映画化。
本作は1972年のソ連映画「惑星ソラリス」のリメイク作です。
1972年の頃と比べてCGにより映像面が強化され、
宇宙科学系の映画として完成度が高くなっています。

宇宙を舞台にしたロマンス映画のように見えますが、
実のところは生命科学系のドラマです。

なんの事前情報もなく見てしまうとチンプンカンプンになるので、
以下の解説を読んでおいてから閲覧しましょう。

本作を見る上で了解しておかなければいけない事があります。
原作『ソラリスの陽のもとに』で描いているのは、
「人間が考えていることは、人間以外には理解できない」
という作家・スタニスワフ・レムの哲学的なテーマです。

人間には人間の、犬には犬の、魚には魚の、
そして、エイリアンにはエイリアンの考え方があり、
それをお互いが理解することは到底出来ないという前提です。

惑星ソラリスは、その星を覆う「海」が一つの生命体(のようなもの)です。
つまり、惑星そのものがエイリアンであるということ。
もっと言えば、「惑星そのものがエイリアン」という解釈も、
それこそ、人間の解釈でしかない。
という突き放した設定があります。

それでも人間らしい解釈によって惑星ソラリスを説明すると、
ソラリスは、海や星本体、その周囲の衛星の影響を受けて「生命」になっています。
つまり、ソラリスの思考は、この星の周囲の者にも影響を与えるのです。
それはちょうど、人間という生命が、周囲の「他者」や「気温」などの環境に影響を受け、
逆に、それらに影響を与えていることと一緒です。
もっと言えば、思考するのは「脳」の活動ですが、
その脳の活動には神経シグナルや血液の影響を受け、
反対にそれらに対し影響を与えるのです。

ですから、惑星ソラリスの周囲に人間が近づけば、
惑星ソラリスにも影響が及びますが、人間の側にも影響があります。

圧倒的に巨大な「知」と「脳」の塊であるソラリスに近づいた人間は、
そこで自分にとって大切な記憶を呼び起こし、それが実体化する体験をするのです。
おそらく、そこで人間が体験した出来事は、ソラリスの思考が影響しているのでしょう。
しかし、ソラリスの「目的」や「意思」を理解することは出来ません。
相手は「星」や「海」であり、人間ではないからです。

たぶん、惑星ソラリスにとって人間の訪問は、ほんの僅かな期間の出来事なのでしょう。
星の寿命は人間のそれとは比べ物にならないほど長大です。
何億年という時を生きている生命体なのですから。

寿命が80年ほどある人間にとって、寿命が数秒の生物のことをどのように想うでしょうか。
例えば、ヒトの体内の微生物や細菌です。
食事や呼吸によって、たまたま体内に入ってきた微生物だっているでしょう。

彼ら(微生物)は、「ヒト」という巨大な存在に何かしらの影響を与えているかもしれない。
しかし、それ以上にヒトから影響を受けているのは微生物のほうかもしれません。
それも、なにがなんだか分かっていないまま、不思議な体験をし、そして消えてゆく。

ソラリスに近づいた人間は、それと同じことではないか。
そして、そこには目的や意味など見いだせるはずがありません。
ヒトの思考を、微生物が理解できないことと一緒なのです。

そんな宇宙の一コマを描いた映画と言えます。

名言

私達のすべてが許される、すべてが。

コメント

タイトルとURLをコピーしました