シンクロナイズドモンスター(2017年)

映画

ジャンル:心理学系怪獣映画、ネット社会系怪獣映画、ゴジラ映画
監督:ナチョ・ビガロンド
主演:アン・ハサウェイ

見どころ

あのアン・ハサウェイが怪獣映画を製作総指揮。
その時点で、この映画が普通の怪獣映画ではないことは分かります。

本作の評価はまさに賛否両論。
ただ、映画評論家からの評価は高く、一般からの評価は低いという特徴を持っています。

大学生であれば、本作が自分自身にとって面白いかどうかを考えるよりも、
どうしてそんな評価になるのか考えることが大切です。

本作は、ゴジラやエイリアン襲来のような映画ではありません。
「怪獣」の正体を映す映画です。
映画に詳しい人(評論家)からの評価が高く、
そうでない一般人からの評価が低いのはそのためです。

類似したものに、「2001年宇宙の旅」や、
「ルパン三世カリオストロの城」などがあります。
こうした作品は、当初は一般人からは酷評されますが、
映画に詳しい人からは一定の評価を受けます。
なお、上記2作品はその後、映画史に残る傑作と呼ばれます。
映画評論なんてそんなものです。

大学生は、事前に以下の点を気にして見ておきましょう。

この映画は「怪獣」の物語が誕生する理由を述べています。
怪獣とは、人の心が作り出すものです。

誠実さに欠けた言動や、小さなコンプレックスは、
本人たちが気づかない別の世界で、
「怪獣」となって人々を苦しめる。
それは決して「自分たちの世界」では暴れません。

典型的なのがネット世界です。
主人公グロリア(アン・ハサウェイ)の仕事がWEBライターであることも、
そして彼女がネット炎上によって解雇されたことも、
それを象徴しているものと考えられます。
グロリアは、ネット炎上という怪獣に襲われてクビになり、
田舎町へと帰ってきたわけです。

帰ってきた田舎町には、グロリアを慕う男オスカーがいました。
表面上は「ナイスガイ」なのですが、実は裏の顔があります。
彼はグロリアを慕っていたのではありません。
無意識に嫉妬し、自分のコンプレックスをグロリアに向けていたのです。

それは小学生の頃からずっとです。
実はグロリアもそのことを知っていましたが、
記憶の奥底に封印していました。

劇中に、グロリアとオスカーがジオラマを作って歩いているシーンがあります。
見事な出来のグロリアに対し、オスカーの作ったものはショボい。

オスカーは親切な行為をするフリをして、
グロリアのジオラマ(韓国ソウルの街)を破壊します。

グロリアとオスカーの確執は、
今は公園の砂場になったその場所での出来事に縛られたまま。
逆に言えば、そうした憎悪の始まりが、
怪獣を生み出して、何の関係もない人々も巻き込んでいく。

それは田舎町での人間感であり、
遠く離れた韓国ソウルの街なのです。

グロリアは才能を生かしてWEBライターになりますが、
思慮に欠ける記事によって凋落しました。
一方、才能を見いだせないオスカーは、
他人の不幸を笑い、憂さ晴らしに興じる人間でした。

その舞台が「公園の砂場」で展開されることも、
2人の幼稚性を示しています。

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